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WACC水準(市場平均/業種別)

WACCの水準について試算してみたので記載しておきます。

WACCは株主資本コストと負債資本コストを加重平均にて算定する必要があるため、各パラメータについて以下コメントしていきます。

なお、これらのパラメータについてはDamodaran教授(バリュエーションの世界でかなりの有名なNYU教授)のHP↓より引用しております。

https://pages.stern.nyu.edu/~adamodar/

 

■株主資本コストの計算

CAPMに基づいて次の通り計算。

①リスクフリーレート+②資本コストプレミアム×β(+③個別リスクプレミアム)

①については日本国債10年物利回りを参照し0.9%、②については6.0%を計算にあたり参照する。

また、βについては上述のダモダラン教授のHP内において各国のインダストリー別に開示がなされているため当該開示値を参照することとする(Dataタブ→CurrentData or Archived Data→)。

なお、βは各銘柄(あるいはポートフォリオ)が証券市場全体の動きに対してどの程度敏感に反応して変動するかを示す数値であり、生活必需品やインフラ産業など安定的な業界については低い傾向があり、技術の入れ替わりの激しい半導体などのテクノロジー関連や金融関連業界は高い傾向がある。

当該β(基準日:202415日)を参考に株主資本コストを計算すると株主資本コストは6.9%になる。また、サイズプレミアム(Sp)を03%のレンジでとり、企業価値に対する株式時価総額の割合を68.3%、実効税率を30.62%で計算すると次の通りとなる。なお、表中の略は以下。

リスクフリーレート:Rf

資本コストプレミアム:ERP

サイズプレミアム:Sp

株主資本コストを:CoE

WACCの計算

CoDについては、BBB格の10年社債利回り1.1%を参照の上、次の通り計算した。

負債調達コスト(税前):Rd

負債資本コスト:CoD

KPMGレポート

KPMGにより開示されている「資本コスト等を意識した経営の実現コーポレートガバナンス報告書開示実態調査」が開示されている。当レポートは、コーポレートガバナンス報告書のXBRLデータからテキストマイニングし、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応に関する開示を分析したとのことであり、母集団は38社ではあるものの資本コストを開示した企業の株主資本コストの平均値は6.9%WACCの平均は6.0%であるとのこと。

https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2024/01/cost-of-equity.html

 

KPMGレポートとの突合

「株主資本コストの計算」にて記載したとおり、ダモダランベースでの計算結果はサイズプレミアムを0%ベースで6.96%と算定されている点で、KPMGレポート(6.9%)と整合を確認できた。

WACCについてはサイズプレミアムが0%では5.1%なのでKPMGレポート(6.0%)と整合を確認できなかったが、03%の平均値ベースでは6.1%と計算された。

KPMGレポートとの完全一致にはならなかったもののの、おおむね上述のレベルなのだと思います。

なお、任意のインダストリーをピックアップしてインダストリー別WACCを算定してみたのでご参考までに添付いたします。

以上、個人的興味で算定したので書き溜めておきます。
ブラックキャピタル

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